
米国株の税金 - 日本居住者の二重課税と外国税額控除
米国株の配当は、米国と日本で税金を二度払います。日本に住む投資家が知っておきたい二重課税の仕組み、外国税額控除で取り戻す方法、そしてNISAで米国株を買うときの落とし穴まで整理します。
日本株の税金と口座の記事で日本株の税金を整理しました。ところが米国株は税金の仕組みが少し違います。最も大きな違いは、米国株の配当は2つの国で税金を二度払うという点です。日本に住む投資家なら、この二重課税の仕組みを知っておかないと、受け取れる還付を取り逃します。
税率や制度、租税条約は変わることがあり、個人の事情によって異なります。本記事は基本的な仕組みを説明する入門記事であり、実際の申告や還付は税務の専門家、そして取引先の証券会社の公式案内をご確認ください。
配当は税金を二度払う
日本に住む投資家が米国株から配当を受け取ると、税金が二度かかります。
- まず米国で10%: 配当が支払われるときに米国で10%が源泉徴収されます。日米租税条約による税率です。
- 次に日本で約20.315%: 米国で10%を引いて残った金額が日本に入ると、そこに日本の約20.315%が再びかかります。
数字で見るとこうです。配当100を受け取ると米国で10が引かれて90になり、その90に日本の税金約20.315%がかかって約18がさらに引かれます。結局手元に残るのは約72で、実効税率が約28%まで上がります。日本株の配当の約20.315%より重いわけです。
外国税額控除で取り戻す
幸い、この二重課税はある程度取り戻せます。日本には外国税額控除(外国税額控除)という制度があり、米国で払った10%の一部または全部を取り戻せます。
方法は確定申告です。配当を申告するときに外国税額控除も一緒に申請すれば、外国(米国)に払った税金の分だけ日本の税金から差し引いてくれます。こうすると二重課税が調整され、実効税率が日本株と近い水準まで下がります。
ただし控除には限度があり、ご自身の所得や他の税金の状況によっては全額を取り戻せないこともあります。特定口座(源泉徴収あり)を使っていてふだん申告が要らない人も、米国株の配当があるなら外国税額控除のために確定申告をするほうが得な場合が多いです。
譲渡益は二重課税ではない
配当と違い、株を売って出した譲渡益(売却益)は二重課税ではありません。 米国は外国人投資家の譲渡益には課税しないからです。だから米国株を売って利益が出たら、日本の約20.315%だけ払えば済みます。この点は日本株と同じです。
整理すると、二重課税が問題になるのは配当であり、譲渡益は日本の税金だけ気にすればよいです。
NISAで米国株を買うときの落とし穴
ここで日本の投資家がよく見落とす点があります。NISAで米国株の配当を受け取っても、米国の10%はそのまま引かれるということです。
NISAは日本の税金を0にしてくれる制度です。だからNISAで米国株の配当を受け取れば、日本の20.315%はかかりません。ところが米国で引く10%は日本の制度とは関係がないので、NISAでもそのまま引かれます。
さらに残念な点があります。外国税額控除は「日本で払った税金から差し引く」制度ですが、NISAはそもそも日本の税金が0なので、差し引く税金がありません。 つまりNISAで受け取った米国株の配当は、米国10%を引かれても、その10%を外国税額控除で取り戻せません。
そのため米国の高配当株のように配当が大きい銘柄をNISAに入れると、日本の税金は節約できますが、米国10%はまるごと負担することになります。逆に配当が少なく株価成長が中心の銘柄(たとえばS&P500のような指数)は、米国で引かれる配当の税金が小さく、NISAの非課税効果をそのまま受けやすいです。
日本株と米国株、税金の比較
| 区分 | 日本株 | 米国株 |
|---|---|---|
| 配当の課税 | 約20.315%(日本のみ) | 米国10% + 日本約20.315% |
| 配当の二重課税の調整 | 該当なし | 外国税額控除(確定申告) |
| 譲渡益の課税 | 約20.315%(日本のみ) | 約20.315%(日本のみ) |
| NISAの配当 | 完全非課税 | 米国10%はかかる(控除不可) |
税金だけで決めはしない
米国株の配当の税金が日本株より重いからといって、米国株が不利だと言い切ることはできません。米国株、とくに指数投資の魅力は配当より長期的な株価成長にあり、譲渡益は日本株と税金が同じだからです。税金は確かに考慮する要素ですが、それだけで投資先を決めるものではありません。
ただし2つは覚えておくとよいです。一つ、米国の高配当株は二重課税のせいで税引き後の利益が思ったより減ることがあるので、配当中心で米国株を見るならこの負担を踏まえる必要があります。二つ、配当が大きい米国銘柄をNISAに入れるときは米国10%がそのまま引かれる点を知って入れるべきです。円安の局面で米国株をどう見るかは円安160円、米国株を買ってもいいかの記事で別に整理しました。
おわりに
米国株の税金で核心は3つです。配当は米国と日本で二度払い、その二重課税は外国税額控除で調整し、NISAでは米国10%の分だけはどうしても負担するということです。譲渡益は日本株と変わらないので、結局気にするのは配当です。米国株を配当中心で見るなら税金を、成長中心で見るなら為替と企業の成長をより重く見ればよいです。
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や商品の売買を推奨するものではありません。税率・租税条約・外国税額控除の細かいルールは変更される場合があり、個人の事情によって異なることがあるので、実際の申告や還付は税務の専門家と取引先の証券会社の公式案内でご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。