防衛費増額の時代を走る日本の防衛関連株 - 三菱重工業・IHI・NECなど7銘柄
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防衛費増額の時代を走る日本の防衛関連株 - 三菱重工業・IHI・NECなど7銘柄

GDP2%時代に入った日本の防衛費。その直接の受益者である防衛関連株7銘柄(三菱重工業、川崎重工業、IHI、日本製鋼所、三菱電機、NEC、東京計器)をPER・PBR・受注の構造で整理します。3年で3〜5倍になった株価と直近の急調整をどう見るかまで整理します。

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日本の防衛費は、2023〜2027年度の5年間で43兆円という防衛力整備計画とともに、GDP2%の水準へ引き上げられました。年間の予算が決まっており、装備の調達は数年単位の契約で積み上がります。つまり防衛産業は、需要の見通しが最も立てやすいテーマです。株式市場がこれを見逃さず、防衛関連株はこの3年で155〜451%の上昇という、AI電線株に匹敵するラリーを演じました。

ところが、いまこのグループは別の局面にいます。直近3か月の株価は三菱電機を除いて全部マイナスで、IHIと東京計器は年初来高値からほぼ半値(−48%、−47%)です。約束された需要はそのままなのに、株価だけが大きく冷えたわけです。この調整が押し目なのか、先走った期待の巻き戻しなのか。それがこの記事のテーマです。

指標は2026年6月12日の終値ベースの参考値で、相場によって日々変わります。指標の定義は株式の投資指標の読み方の記事で整理しました。実際の判断の前には各証券会社や公式IRで最新値をご確認ください。

表A - バリュエーション

完成体・重工、防衛エレクトロニクスの順に並べました。PERと配当は予想ベースです。

銘柄コードグループ株価時価総額予想PERPBRROE予想配当
三菱重工業7011完成体・重工3,540円11.94兆29.0倍3.8512.2%0.86%
川崎重工業7012完成体・重工2,834円2.38兆20.9倍2.7013.7%1.29%
IHI7013完成体・重工2,430円2.63兆16.7倍3.9528.4%1.08%
日本製鋼所5631完成体・重工7,549円0.56兆24.3倍2.629.5%1.42%
三菱電機6503防衛エレキ5,545円11.72兆22.9倍2.539.7%1.22%
NEC6701防衛エレキ3,879円5.29兆17.9倍2.3413.0%1.11%
東京計器7721防衛エレキ5,050円0.09兆17.4倍1.829.3%1.00%

目を引くのは、コンセンサスレーティングが7銘柄すべて3.9以上という点です(日本製鋼所4.5、NEC4.3は強気)。アナリストの見方がここまで一方向にそろうテーマは珍しい。配当は0.86〜1.42%と軒並み低く、配当ではなく成長で持つグループだということです。

表B - 成長と株価の位置

同じ7銘柄を成長と株価の流れで見直します。増収率と経常増益率は前年度比です。

銘柄コード増収率経常増益率ベータ1年株価3年株価
三菱重工業7011−1.1%+26.7%1.44+3.0%+450.9%
川崎重工業7012+8.5%+35.4%1.48+35.5%+314.5%
IHI7013+1.0%+33.9%1.36+13.3%+356.2%
日本製鋼所5631+10.6%+10.9%1.60−0.0%+155.0%
三菱電機6503+6.8%+20.3%1.28+89.5%+179.8%
NEC6701+4.7%+66.1%1.18−0.3%+179.8%
東京計器7721+6.1%+9.8%1.54+18.5%+300.5%

3年株価がこのテーマの本質を物語ります。全部が2.5〜5.5倍です。そしてベータが1.18〜1.60と、7銘柄すべて市場より振れやすい。ベータ0.4〜0.6の生活インフラ株だったインバウンドの移動株とは正反対の性格で、同じ「政策の追い風テーマ」でも株価の体質がまったく違います。

完成体・重工 - 戦闘機、潜水艦、砲身

  • 三菱重工業(7011)は日本の防衛産業の最大手です。次期戦闘機(英・伊との共同開発)、ミサイル、護衛艦、潜水艦と主要装備の頂点を担い、防衛の受注残高は数年分の仕事量として積み上がっています。時価総額11.94兆円、3年株価+450.9%とこのラリーの看板でした。ただ直近3か月は−26.0%、高値から−32.0%と調整も大きい。予想PER29.0倍、PBR3.85倍に信用倍率31.5倍という需給の重さまで、期待が最も織り込まれた銘柄です。なおAIデータセンター関連株の記事ではこの会社をガスタービン発電設備の角度で取り上げており、防衛とエネルギーという二つの国策テーマを同時に抱えていることになります。
  • 川崎重工業(7012)は潜水艦、哨戒機、輸送機、ヘリコプターを作ります。直近期は経常増益+35.4%、1年株価+35.5%と、完成体グループにおけるこの1年の勝者です。ただ自己資本比率26.4%、有利子負債自己資本比率98%と、財務はこのグループで最も重い。
  • IHI(7013)は戦闘機エンジンの会社です。ROE28.4%と7銘柄で最高ですが、年初来高値から−48.3%と調整も最も深い。信用倍率44.3倍という信用買い残が、反発のたびに売り物として出てくる構造です。AIエネルギー株の記事では原発設備の角度で取り上げた銘柄で、防衛エンジンと原発という二本の期待を背負っています。
  • 日本製鋼所(5631)はもともと兵器製造から出発した会社で、艦砲と砲身では国内で他に代わりがいません。コンセンサスレーティング4.5と7銘柄で最も高く、増収率+10.6%と外形も堅調です。ベータ1.60と最も振れやすい銘柄でもあります。こちらもAIエネルギー株の記事で、原子炉の鍛造部品の角度で取り上げました。

防衛エレクトロニクス - レーダー、通信、ジャイロ

  • 三菱電機(6503)は防衛レーダーとミサイル誘導システムの中核サプライヤーです。本業はFA(工場自動化)や電力機器、家電まで広がる総合電機で防衛は一部ですが、その一部が速く伸びています。1年株価+89.5%と7銘柄で最強、3か月も+0.4%と唯一持ちこたえました。自己資本比率61.0%、有利子負債8.1%と財務も最も堅い。
  • NEC(6701)は防衛通信とレーダー、そしてサイバー防衛を担うITの会社です。直近期の経常増益率は+66.1%と7銘柄で最大ですが、1年株価は−0.3%と一服中です。信用倍率57.5倍は7銘柄で最も重い需給の負担です。
  • 東京計器(7721)はジャイロと慣性航法、艦艇用レーダーを作る、時価総額860億円の小型株です。7銘柄の中で防衛への依存度が最も高い、純粋な防衛株に近い存在で、その分値動きも極端です。3年で+300.5%と走った後、高値から−47.1%まで押されました。小型株特有の薄い流動性は、入る前に知っておくべき点です。

約束された需要、先に行った株価

防衛テーマの魅力は、需要が国家予算として約束されていることです。43兆円計画は進行中で、安全保障環境を考えればその次の増額の議論も続く可能性が高い。受注残高は実際に積み上がっています。

それでも株価が冷えたのには、構造的な理由があります。第一に、株価が先に走りすぎました。3年で3〜5倍は増額分のかなりの部分を織り込んだ水準で、信用倍率30〜57倍が物語るように、出遅れて乗った買いが上に積もっています。第二に、防衛の売上は計上までに時間がかかります。受注から納品まで数年かかる商売なので、発表される受注残高と損益計算書の売上の間にはタイムラグがあります。期待(受注)は先に価格になり、確認(業績)は後から来る構造です。第三に、予算や政治日程、輸出規制といった政策イベントの合間の空白で、テーマは簡単に冷えます。

整理すると、防衛株は方向の確実性と価格の重さが同居するグループです。インバウンド3部作が移動・宿泊・消費の段階に分かれていたとすれば、防衛では受注と業績のタイムラグに耐えられるかが選ぶ基準になります。

銘柄ごとの一言整理

  • 三菱重工業(7011)防衛ラリーの看板。受注残も期待も需給の重さも、すべてが最も厚い。
  • 川崎重工業(7012)潜水艦・哨戒機で1年+35.5%の勝者。ただ財務は最も重い。
  • IHI(7013)ROE28.4%の最高と高値から−48%の最深。期待も調整も両極端です。
  • 日本製鋼所(5631)砲身の独壇場でコンセンサス4.5の最高評価。ベータ1.60と最も振れます。
  • 三菱電機(6503)1年+89.5%の最強に財務も最強。防衛エレキの優等生です。
  • NEC(6701)経常+66%の成長に株価は横ばい。信用倍率57倍の消化が課題です。
  • 東京計器(7721)唯一の純粋防衛の小型株。値動きも調整も最も極端です。

おわりに

防衛費の増額は政策が約束した成長であり、その約束はいまも有効です。ただ市場は約束を聞いた瞬間に価格へ織り込んでしまうため、投資家が向き合うのは「良いテーマ」ではなく、すでに3〜5倍になった後の価格と深い調整です。ベータ1.2〜1.6の振れ幅と、受注と業績のタイムラグに耐えられるなら調整は機会になり、そうでなければ同じ国策テーマでも性格の穏やかな側が合っています。次の記事では、もう一つの構造的な成長テーマ、ロボットと工場自動化(FA)の関連株を整理します。


※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。指標は2026年6月12日の終値ベースの参考値であり、正確性・最新性を保証しません。防衛予算や政策、輸出規制は政治日程によって変動が大きく、株価は相場によって大きく変わり得ますので、実際の判断の前には各証券会社や公式IRで最新値をご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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